『人がアルコールに走るには深い訳がある〜セロトニンとアルコールの関係』
なぜ人はアルコールに走るのか?
ストレス解消法は人それぞれですが、アルコールを選ぶ人は少なくありません。お酒を飲むと気分が軽くなり、心の疲れがほぐれるように感じることがあります。しかし、その背後には脳内の複雑なメカニズムが隠されています。
私は幸運にもお酒が飲めない体質なので、アルコール依存症になる心配はありません。
しかし、多くの人がストレスを抱えたときにアルコールに頼る理由は何なのでしょうか?
アルコールの鎮静作用とストレス軽減
アルコールには脳内で鎮静作用をもたらす「GABA」の働きを活性化させる効果があります。この作用によって、一時的に不安や緊張が和らぎ、ストレスを軽減するように感じるのです。
しかし、過量のアルコールは、プーファの過酸化脂質と同じアルデヒドが発生するため、逆効果になっていきます。
参考文献
・GABAergic signaling in alcohol use disorder and withdrawal: pathological involvement and therapeutic potential. Front Neural Circuits. 2023 Oct 20;17:1218737.
・Knowledge atlas of the involvement of glutamate and GABA in alcohol use disorder: A bibliometric and scientometric analysis. Front Psychiatry. 2022 Aug 12;13:965142.
アルコールはセロトニンを減少させる!
アルコールで興味深いのは、急性アルコール中毒ではセロトニンが上昇しますが、慢性アルコール摂取でセロトニンは逆に減少することです。
セロトニンは強力なストレス物質(不安、恐怖、衝動性、抑うつ症などを引き起こす)ですので、アルコールの慢性摂取によって、セロトニンというストレス物質を低下させているのです(GABAのセロトニン抑制作用)。
参考文献
・Serotonin’s Role in Alcohol’s Effects on the Brain. Alcohol Health Res World. 1997;21(2):114–120.
・The role of brain serotonin signaling in excessive alcohol consumption and withdrawal: A call for more research in females. Neurobiol Stress. 2024 Feb 20:30:100618.
・GABAB receptor-mediated inhibition of serotonin release in the rat brain. Naunyn-Schmiedeberg’s Arch. Pharmacol. 326, 99–105 (1984).
・(-)Baclofen decreases neurotransmitter release in the mammalian CNS by an action at a novel GABA receptor. Nature. 1980 Jan 3;283(5742):92-4.
・A Review of the Potential Mechanisms of Action of Baclofen in Alcohol Use Disorder. Front Psychiatry. 2018 Oct 17;9:506.
セロトニンが依存症を作る!
近年の研究では、セロトニンをブロックするとアルコール中毒が治ることが示されています。
これは、セロトニンこそがアルコール依存の原因であることを示す重要なエビデンスです。
セロトニンがアルコール依存症(現在では治療不可能とされている)やその他の依存症の原因であるとすれば、セロトニンが「幸福ホルモン」として医学的に正式に推奨されるのはなぜでしょうか?
参考文献
・Low-dose ondansetron: A candidate prospective precision medicine to treat alcohol use disorder endophenotypes. Eur J Intern Med. 2024 Sep:127:50-62.
・Safety and compliance of long-term low-dose ondansetron in alcohol use disorder treatment.Eur J Intern Med. 2024 Sep;127:43-49.
「アルコール中毒」という病名は存在しない!
不安を抱える人々は、アルコール摂取率が高く、深刻な不安を抱える場合にはアルコール依存症に陥る可能性もあります。
しかし、上記の多数のエビデンスから、「アルコール依存症」や「中毒」というものは実際には存在せず、むしろ、安価で広く入手可能な強力な抗セロトニン(つまり抗不安薬)であるアルコールを、ストレス下にある人々が自己治療のために使用しているに過ぎないことが分かります。
したがって、セロトニン(ストレス)を低下させる他の健全な方法があれば、アルコールに頼ることはなくなります。