『ビタミンB17は、がんの特効薬か?』

世の中には落とし穴がたくさんあります。

私もこの歳になっても、まだその中にトラップされることがあります。

特に自分が専門にしていること以外の分野では、この落とし穴に気づきません。

さて、現代医療批判を前面に出す巧妙な詐欺も横行しています。

その一つが、代替医療と称して、危険な商品を売る行為です。

先日、私のところにもある方から、がんを根治させるという代替療法のビデオ(Helththveins)が送られてきました。

エモーショナルなバックミュージックで情動が撹乱されます。。。。。。

「ガンは現代医療の巨大な利権である」・・・・・・からスタートし、何を言うのかと思ったら、

なんと『World without cancer(the story of vitaminB17)』の話でした。

私は数年前にこの本を読んで、現在の代替医療も現代医療と何も変わらないことを痛感しました(エビデンスが嘘か元々ないかの違い)。

ビタミンB17は、アプリコットやピーチの核種(種)から抽出されるシアン化合物(cyanogenic glycoside)です。アミグダリン(amygdalin)と呼ばれています。

青酸カリと同じシアン化合物です。

アミグダリン(amygdalin)は経口摂取すると、シアン化合物となって小腸から吸収されます。

強力な毒性があるため、がん細胞にふりかけると当然死滅します(BMC Complement Altern Med. 2019 Jan 29;19(1):32)。

勘の鋭い方から、この先はもうお分かりでしょう。

正常細胞も死滅するのです(基礎医学シリーズ 参照)。

ある意味、ビタミンB17と勝手に名付けているシアン化合物は、抗がん剤よりも危険かも知れません。

実際にこのシアン化合物(健康ビジネスのプロモーション)に引っかかった人の症例が過去にも報告されています(Clin Toxicol (Phila). 2019 Jul 19:1-4)(Case Rep Emerg Med. 2017; 2017: 4289527)。

頭痛、嘔吐、意識混濁、致死性の不整脈(QTc prolongation)などが起こりますが、これはまさしく青酸カリ中毒の症状です。

ちなみにシアン化合物は、キャベツなどのアブラナ科の野菜にも含まれています。

イソチアネート(isothiocyanates and isocyanates)と呼ぶ物質で、ダイレクトに甲状腺障害を持ちます。

これらのシアン化合物中毒にたいしては、ビタミンB12の前駆体(Hydroxocobalamin)が有効です。

特に植物は生体毒をたくさん持っていますので、植物から抽出される物質をガン細胞にふりかけると死滅させることができます。

しかし、それは正常細胞も同じであって、抗がん剤と何も変わらないのです。

抗がん剤も植物から抽出した成分が元になっていることが多いのですから。

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