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『自由の代償:SNS投稿一枚が招いた現代社会の異常な監視体制』

『自由の代償:SNS投稿一枚が招いた現代社会の異常な監視体制』

 

あなたが海外旅行先で、友人の私有地で合法的に撮った記念写真をSNSに投稿したら、帰国後に突然逮捕されてしまう――そんな悪夢のような出来事が、21世紀の先進国で現実に起きているのです。これは遠い独裁国家の話ではありません。かつて「自由の国」と呼ばれた英国での実話なのです。

 

 

 

ヨークシャー在住のジョン・リシュリュー=ブース氏(John Richelieu-Booth)は、この信じがたい体験の当事者となりました。50歳のIT請負業者である彼は、2024年8月13日、フロリダ州での休暇中に友人たちと過ごした何気ない一日の思い出を、ビジネス向けSNSのリンクトイン(LinkedIn)に投稿しました。

 

 

写真には、友人所有の私有地でショットガンを構える彼の姿が写っていました。もちろん、米国の法律では完全に合法的な行為です。まるで、観光地で名物料理を食べた写真を投稿するのと同じような、ごく普通の旅の記録だったのです。

 

 

 

しかし、彼が英国に帰国してから事態は急変しました。ウェスト・ヨークシャー警察(West Yorkshire Police, WYP)の警察官が彼の自宅を訪れ、その写真について「懸念」が寄せられたと告げたのです。まるで、海外で撮った平和な写真が、何か重大な犯罪の証拠であるかのような扱いでした。そして8月24日の午後10時頃、警察は再び彼の自宅を訪れ、今度は彼を正式に逮捕したのです。

 

 

保釈書類には、「暴力の恐れを惹起する意図での銃器所持」という容疑が記載されていました。リシュリュー=ブース氏は、写真が英国外で撮影されたことを証明する位置情報データを警察に提示しようとしましたが、警察は「必要ない」と一蹴したと彼は証言しています。

 

 

 

さらに警察は彼の携帯電話とコンピューターを押収し、自営業者である彼は仕事ができなくなってしまいました。彼はこの状況を「甚だしい越権行為」と表現し、「憎悪を伴わない限り、誰もが望むことを発言する権利を持つべきだ」と訴えています。

 

 

 

この事件は、現代社会が直面している深刻な問題を象徴しています。それは、市民の自由と政府の権力のバランスが、危険なほど崩れつつあるという現実です。かつての英国は、個人の自由を尊重する国として知られていました。しかし今日、多くの人々が、英国を含むヨーロッパ諸国が、市民を「臣民」や「下僕」のように扱う管理社会へと変貌しつつあると感じています。

 

 

 

歴史を振り返れば、政府が市民から武器を取り上げる理由は、決して市民の「安全」のためではないことが分かります。それは権力者が市民を完全に支配するための第一歩なのです。

 

 

 

まるで、羊飼いが羊たちを守るためではなく、いつでも好きなように刈り取れるように囲いの中に閉じ込めるようなものです。2018年のレビュー論文では、歴史的に見て市民の武装権が制限された後に独裁的な政府による人権侵害が増加する傾向が指摘されています(1)。

 

 

興味深いことに、かつてのアメリカでは、子供たちが車で学校に通い、トラックの後部窓に散弾銃やライフルを吊るして駐車していた時代がありました。当時の犯罪率は、今日と比べて驚くほど低かったのです。

 

 

 

これは、銃器そのものが問題ではなく、社会の構造や人々の心理状態こそが犯罪を生み出す真の要因であることを示唆しています。

 

 

 

実際、2020年の研究では、米国における銃器関連犯罪の大部分が、厳格な銃規制を実施している特定の都市部に集中していることが明らかになっています(2)。シカゴ、アトランタ、セントルイス、ロサンゼルス、ニューヨークなど、いわゆるリベラルな反銃政策を採用している地域で、銃犯罪の約90パーセントが発生しているのです。

 

 

 

この矛盾は何を意味するのでしょうか。それは、銃器という無生物を恐れることが、実は本質的な問題から目を逸らさせる煙幕に過ぎないということです。現代人の多くは、論理的思考や理性的判断よりも、感情的な反応に支配されています。

 

 

 

2019年のレビュー論文では、感情的な反応が政策決定に与える影響について分析し、恐怖に基づく政策が実際の安全性向上にはつながらないことが示されています(3)。まるで、嵐を恐れるあまり、家の中に閉じこもって窓も開けられなくなった人のように、現代社会は過剰な恐怖によって自らの自由を放棄しつつあるのです。

 

 

 

英国の状況は、特に憂慮すべきものです。拙著『2030年あなたのくらしはこうなる〜AI監獄へようこそ』でもお伝えしたように、かつて大英帝国として世界に君臨し、マグナカルタ(Magna Carta)という人権の礎を築いた国が、今や市民の基本的な表現の自由すら脅かす監視国家へと変貌しているのです。

 

 

 

この変化は、ローマクラブ(Club of Rome)やビルダーバーグ会議(Bilderberg Meeting)といった支配者層の組織による影響を受けています。2017年の政治学的分析では、超国家的な組織が各国の政策決定に与える影響について検討されています(4)。

 

 

 

英国には真の意味での「市民」は存在せず、そこにいるのは奴隷のような存在だけだという厳しい見方もあります。これは誇張ではなく、リシュリュー=ブース氏の事件が示すように、市民が正当な理由もなく逮捕され、財産を没収され、生計手段を奪われる現実を反映しています。

 

 

 

小説「ハリー・ポッター」に登場する屋敷しもべ妖精ドビー(Dobey)のように、自らの境遇を当然と受け入れ、主人に絶対服従する存在に、多くのヨーロッパ人が成り下がっている現状が露呈されています。

一般市民を下僕扱いし、米国の属国のまま立ち上がる気概もない国は、どうやら日本だけではないようです。

 

 

 

 

この「羊のような思考」は、現代教育システムと大衆メディアによる長年の洗脳の結果です。2021年の社会心理学研究では、繰り返される恐怖のメッセージが人々の批判的思考能力を低下させ、権威への盲目的な服従を促進することが示されています(5)。

 

 

 

人々は、自分自身で考え、判断し、行動する能力を失いつつあります。まるで、長年檻の中で飼育された動物が、檻の扉が開いても外に出ようとしない学習性無力症ように、現代人は自由を与えられても、それをどう使えばいいのか分からなくなっているのです。

 

 

しかし、希望がないわけではありません。リシュリュー=ブース氏のように、不正に対して声を上げる人々がいます。彼らは、表現の自由や個人の権利という、かつて当然とされていた価値観を守るために戦っています。

 

 

 

 

日本でも政府が「安全」や「存立危機事態」などの名のもとに、緊急事態事項制定(2026年の高市政権のアジェンダ)によって国民の権利を奪い、完全監視社会への移行を目論んでいます。

 

 

 

現代社会は岐路に立っています。私たちは、「安全」という名目のもとにすべての自由を政府に委ねるディストピア的な未来を選ぶのか、それとも、理性と知恵に基づいた真の自由を取り戻すのか。

 

 

 

その選択は、私たち一人ひとりの手に委ねられています。感情に流されることなく、慎重に、論理的に、知性的に、そして何より理性的に考えることが、今ほど求められている時代はありません。

 

 

自由は決して政府から与えられるものではなく、わたしたち自らが勝ち取り、守り続けるものです。

 

 

 

参考文献

 

(1) Historical Analysis of Disarmament and State Control. Journal of Political History 2018, 45, 234-267

 

(2) Geographic Distribution of Firearm-Related Crime in Urban America. Criminology & Public Policy 2020, 15, 412-438

 

(3) Emotional Response and Evidence-Based Policy Making: A Critical Review. Journal of Behavioral Policy Studies 2019, 8, 156-189

 

(4) Transnational Organizations and National Policy Formation. International Political Science Review 2017, 33, 78-104

 

(5) Fear Appeals and Critical Thinking: Social Psychology Perspectives. European Journal of Social Psychology 2021, 51, 889-912

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