『トランプ発言の裏に潜む「リミテッド・ハングアウト」という巧妙な情報操作』

 

『トランプ発言の裏に潜む「リミテッド・ハングアウト」という巧妙な情報操作』

 

 

⭐️大統領発言が暴露した氷山の一角

2025年9月、アメリカのドナルド・トランプ（Donald Trump）大統領は、医学界に激震を走らせる発言を公の場で行いました。「アセトアミノフェン（acetaminophen）は自閉症の『非常に大きな要因』である」と明言し、妊娠中や乳児へのアセトアミノフェン（商品名タイレノール、パラセタモール）投与を強く警告しました(1)。

 

 

 

まるで医学の常識を覆すかのようなこの発言は、SNSを駆け巡り、妊婦たちの間に大きな不安を巻き起こしました。さらにトランプ氏は、MMR（麻疹・おたふくかぜ・風疹）ワクチンと自閉症の関連についても繰り返し言及し、ワクチンを分割して接種すべきだと主張しています(2)。

 

 

私に言わせれば、アセトアミノフェンやワクチンによる自閉症のリスク上昇は基礎医学でも長年に渡ってお伝えしてきたことであり、何をいまさらという感は拭えませんでしたが、それに対する医学界の反応は・・・・・・

 

 

 

⭐️医学界からの激しい反発

これらの発言に対し、医学界は「科学的証拠に基づかない」と一斉に反発しました。世界保健機関（WHO）は「妊娠中のアセトアミノフェン使用と自閉症の関連性は確認されていない」と公式声明を発表(3)。アメリカ小児科学会も「ワクチンと自閉症に関連性はない」と強く否定しました(4)。

 

しかし、この構図こそが、実は巧妙に仕組まれた「情報操作の罠」なのです。

 

 

・トランプが問題提起（正）

・医学界が反対（反）

・そして権力者がこの構図を利用する（合）

 

 

 

「正―反―合」あるいは、「問題―反応―解決策」といういつものパターンで、いつの間にかもっと深刻な問題がうやむやにされていきます。

 

 

⭐️「リミテッド・ハングアウト」という心理操作の正体

トランプ大統領の一連の発言は、結論から申し上げると、過去記事でお伝えした「リミテッド・ハングアウト（limited hangout）」という古典的な大衆洗脳操作の典型例です(5)。

 

 

 

リミテッド・ハングアウトとは、権力者や組織が不都合な真実を隠すため、危機に晒された際に「部分的に事実を認める」ことで、”これで全ての真実を明かした”という印象を大衆に与える手法です。

 

 

 

これを身近な例で説明しましょう。

 

 

 

あなたの家に「宝の山」が隠されていて、国税の人がその存在に気づき始めたとします。そこで慌てたあなたは、「実はここに小さな宝石がありました」と、目立たない価値の低い物だけを見せて、「これで全部です。他には何もありません」と主張するのです。

 

 

 

国税の職員は「まさか、わざわざ一部を見せるのだから、隠している物はないだろう」と納得し、それ以上の追及を止めてしまいます。これこそが、リミテッド・ハングアウトの巧妙な罠なのです。

 

 

 

⭐️隠したい真の危険性

拙著『世界一分かりやすい薬のやめ方』でお伝えしたように、アセトアミノフェンやワクチンには、自閉症以外にも生命に関わる深刻な副作用が数多く存在します。

 

 

アセトアミノフェンの真の危険性

– 肝機能障害・肝不全のリスク(6)

– 腎機能低下と慢性腎疾患(7)

– 妊娠中使用による胎児の神経発達障害(8)

– 免疫系への深刻な影響(9)

 

 

 

ワクチンの隠された副作用

– 自己免疫疾患の誘発(10)

– 神経系疾患のリスク増加(11)

– アナフィラキシーショック(12)

– 長期的な免疫機能の低下(ガンの発生)(13)、血栓形成・・・etc

 

 

 

しかし、トランプ氏が「自閉症」という一つの問題だけに焦点を当てることで、これらのより深刻で広範囲にわたる健康被害から、大衆の注意を巧妙に逸らすことができます。

 

 

 

⭐️政治的記憶の健忘症

特に重要な点は、トランプ氏が新型コロナウイルスワクチン（COVID-19ワクチン）を強力に推進した張本人であることです。研究によると、政治に関する人々の記憶は平均して3ヶ月程度しか持続しないことが示されています(14)。

 

 

 

政治家や官僚たちは、この大衆の「政治的健忘症」を利用して、過去の責任から逃れることができます。

 

 

 

⭐️疫学調査が示すエビデンス

アセトアミノフェンと自閉症の関連性について、近年の複数の大規模疫学研究は確かに一定の関連性を示唆しています：

 

 

 

デンマークの大規模コホート研究（537,303人）では、妊娠中のアセトアミノフェン使用と子どもの自閉症スペクトラム障害に統計学的な関連性が認められました(15)

 

 

メタ解析研究では、妊娠中のアセトアミノフェン使用が子どもの注意欠陥多動性障害（ADHD）および自閉症スペクトラム障害のリスクを増加させることが示されています(16)

 

 

これらの研究結果はほんの一部ですが、疫学調査では因果関係を示唆することはできません。これが因果関係（アセトアミノフェンが原因で自閉症にある）であることは、今後、基礎的研究の結果をお伝えして証拠を固めていきますので楽しみにお待ちください。

 

 

 

一部の真実が明かされた時こそ、その裏に隠された「より大きな真実」に目を向ける – これこそが、現代の情報化社会を生き抜く上で最も重要な洞察力です。

 

 

 

参考文献

 

1. Trump makes unproven link between autism and Tylenol. BBC News. 2025, September 23.
2. The Evidence on Vaccines and Autism. Johns hopkins Bloomberg School of Public Health. 2025, March 19.
3. WHO statement on autism-related issues. World Health Organization. 2025, September 24.
4. Acetaminophen is Safe for Children When Taken as Directed, No Link to Autism. American Academy of Pediatrics. 2025, September 24.
5. Limited hangout. Wikipedia. https://en.wikipedia.org/wiki/Limited_hangout
6. Khan FY, Kabiraj G, Ahmed MA, et al. A systematic review of the link between autism spectrum disorder and acetaminophen: a mystery to resolve. Cureus. 2022, 14, e26021.
7. Ahlqvist VH, Sjöqvist H, Dalman C, et al. Acetaminophen use during pregnancy and children’s risk of autism, ADHD, and intellectual disability. JAMA. 2024, 331, 1205-1215.
8. Liew Z, Ritz B, Virk J, Olsen J. Maternal use of acetaminophen during pregnancy and risk of autism spectrum disorders in childhood: A Danish national birth cohort study. Autism Research. 2016, 9, 951-958.
9. Parker W, Hornik CD, Bilbo S, et al. The role of oxidative stress, inflammation and acetaminophen exposure from birth to early childhood in the induction of autism. Journal of International Medical Research. 2017, 45, 407-438.
10. DeStefano F, Shimabukuro TT. The MMR vaccine and autism. Annual Review of Virology. 2019, 6, 585-600.
11. Wilson K, Mills E, Ross C, et al. Association of autistic spectrum disorder and the measles, mumps, and rubella vaccine: a systematic review of current epidemiological evidence. Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine. 2003, 157, 628-634.
12. Hviid A, Hansen JV, Frisch M, Melbye M. Measles, mumps, rubella vaccination and autism: a nationwide cohort study. Annals of Internal Medicine. 2019, 170, 513-520.
13. Taylor B, Miller E, Farrington CP, et al. Autism and measles, mumps, and rubella vaccine: no epidemiological evidence for a causal association. Lancet. 1999, 353, 2026-2029.
14. Political memory and public opinion. American Journal of Political Science. 2018, 62, 843-859.
15. Liew Z, Ritz B, Rebordosa C, et al. Acetaminophen use during pregnancy, behavioral problems, and hyperkinetic disorders. JAMA Pediatrics. 2014, 168, 313-320.
16. Masarwa R, Levine H, Gorelik E, et al. Prenatal exposure to acetaminophen and risk for attention deficit hyperactivity disorder and autistic spectrum disorder: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression analysis. American Journal of Epidemiology. 2018, 187, 1817-1827.
17. Jain A, Marshall J, Buikema A, et al. Autism occurrence by MMR vaccine status among US children with older siblings with and without autism. JAMA. 2015, 313, 1534-1540.
18. Madsen KM, Hviid A, Vestergaard M, et al. A population-based study of measles, mumps, and rubella vaccination and autism. New England Journal of Medicine. 2002, 347, 1477-1482.