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『あしたのジョーの真の闘う場所』

 

一つのボクシング興行で2人が開頭手術を受けるのでも日本史上初めてということを先日お伝えしましたが、残念ながらともに亡くなるという異常事態となりました。

 

 

 

国内のボクシングでは、2023年12月の試合後に開頭手術を受けた穴口一輝さんが24年2月に死去。5月の世界戦後に開頭手術を受けたIBF世界ミニマム級前王者の重岡銀次朗(25)さんはまだ意識が戻っていません。

 

 

 

私たちの世代は、ボクシングといえば「あしたのジョー」です。

 

 

 

平和ボケした日本人と対比して、極貧の中から命をかけて這い上がるスポ根漫画ですが、最期は「灰になって燃え尽きて死ぬ」という日本の「道」の美学が貫かれています。

 

 

その漫画の影響もあって、私にはボクシングは不遇な人間(私たちほとんどの大衆にあてはまる)の自己の破壊へ向かう象徴で強く惹かれるものがありました。

 

 

 

ところが、最近は日本のボクシング界に井上尚弥というスーパースターが現れたことで、ボクシング熱が熱くなっています。彼の天才的な運動能力で、危険なボクシングという競技がまるで通常のスポーツのように見えるからです(しかし、最近は井上選手でさえも危険なダウンを奪われている)。

 

 

 

しかし、先日もお伝えしたように、その陰では、命を落とすケースがあとを断ちません。その中でも、気になっていた事件がありますので、今回ご紹介したいと思います。

 

 

 

⭐️2つの深刻な負傷を抱えた最後の3ヶ月

「次世代の井上尚弥」と称された坂間叶夢選手(20歳)の自殺には、これまで十分に報じられていない重大な背景がありました。2023年12月26日の最後の試合から2024年3月18日の予定されていた初防衛戦まで、わずか約3ヶ月という異常に短い期間の間に、坂間選手は深刻な2つの負傷を抱えながら、所属ジムによって無理な試合出場を強要されていたのです。

 

 

 

・第一の負傷:2023年12月26日ガブニラス戦での拳の損傷

勝利の代償として残された拳の負傷

2023年12月26日、東京・有明アリーナで行われた井上尚弥対マーロン・タパレス戦の前座で、坂間選手はジョン・ポール・ガブニラス(フィリピン)と対戦し、5回2分35秒でTKO勝利を収めました 日刊スポーツ1。この試合でプロデビューからの連勝を9に伸ばし、WBA世界ライトフライ級9位にランクされる快進撃を続けていました。

 

 

 

しかし、父・一平さんの証言によると、この勝利の裏で坂間選手は深刻な拳の負傷を負っていました。ガブニラス戦は強打者同士の激しい打ち合いとなり、坂間選手も相当なダメージを受けていたと推測されます。

 

 

 

⭐️負傷隠蔽と早急な次戦決定

問題は、この拳の負傷が適切に治療・管理されることなく、ワールドスポーツボクシングジムが早急に次戦の調整に入ったことです。プロボクシングでは通常、負傷の程度にもよりますが、4ヶ月程度の間隔を空けて年間2~3試合が標準的なスケジュールとされています。

 

 

 

しかし、坂間選手の場合は人気選手であったため、ジムが売上を期待して「なるべく短い期間で多くの試合をさせたかった」のが実情でした。この金銭的動機が、選手の健康管理よりも優先されることになります。

 

 

 

・第二の負傷:2024年3月の左足腱損傷

ロードワーク中に発生した決定的な負傷

2024年3月8日、初防衛戦に向けた調整期間中に、坂間選手はロードワーク中に左足の腱を損傷しました。この負傷は単なる筋肉痛ではなく、「足は腫れあがり、走ることはおろか、歩くことすらままならない」状態でした。

 

 

父・一平さんは、この腫れ上がった足をジム会長の齊田竜也氏にも見せており、会長は負傷の深刻さを十分に認識していました。それにも関わらず、会長は試合中止という判断をしませんでした。

 

 

 

⭐️痛み止め注射による危険な対症療法

左足の腱損傷により走ることができなくなった坂間選手は、「最終まで足の痛み止めを打って」調整を続けることを余儀なくされました。これは医学的に極めて危険な対応です。

 

 

 

痛み止め注射は一時的に痛みを遮断するだけで、根本的な治療にはなりません。むしろ、痛みという身体の警告信号を遮断することで、さらなる損傷のリスクを高めます

 

 

 

・通常の調整からプール調整への変更

走ることができなくなった坂間選手は、「走れなくてもプールで調整して出場しようと最後までどんなボクサーより頑張りました」という状況に追い込まれました。

 

 

ボクシングの減量は本来、「水をたくさん飲んで代謝を良くしたうえで走り込みによって行うもの」ですが、坂間選手は足の負傷により「水を飲まず食事もとらず、絶食して体重を落とすしかなかった」のです。

 

 

 

⭐️父親の必死の直訴と無視される警告

これらの状況を目の当たりにした父・一平さんは、「これ以上無理をさせれば選手生命にもかかわる」と感じ、ジム会長に直訴しました。医師でもある父親の専門的判断として、息子の身体状況が危険域に達していることを訴えたのです。

 

 

しかし、ワールドスポーツボクシングジムの人間たちは「誰も叶夢の減量や体調管理の面倒を見ていなかった」にも関わらず、「何を根拠に『落とせる』と言っているのか」という非科学的な楽観論で試合強行を主張しました。

 

 

 

⭐️最後の抵抗:引退宣言と強硬な説得

3月15日の22時30分過ぎ、父・一平さんはついにジム会長にLINEで「やはり体重落ちないです。引退させます。」とメッセージを送信しました。

 

 

 

しかし、会長は音声通話をかけてきて、「ジムでミットを打って落としましょう」と提案し、最後まで試合出場を強要しました。この時点で坂間選手は、右拳の負傷と左足の腱損傷という2つの深刻な負傷を抱え、絶食による極度の衰弱状態にあったのです。

 

 

 

⭐️最後のメッセージに込められた絶望

3月16日深夜0時過ぎ、坂間選手は家族のグループLINEに最後のメッセージを送信しました。

 

 

 

「ありがとうございました。自分だけじゃ何も出来ないです。もっと自分に厳しくしていかないと上には行けないので頑張ります」

 

 

 

この言葉は、負傷と過酷な減量で限界を超えた状況にありながら、「もっと自分に厳しく」という自己犠牲的思考に支配された心理状態を表しています。本来であれば休養と治療が必要な状況を、選手自身が「自分の甘さ」として責任転嫁してしまう認知の歪み(ガスライティング)が見て取れます。

 

 

 

この認知の歪み(ガスライティング)は、権力者たちが心理学を応用して私たち大衆に日々植え付けているものです。本当は権力者が人工的作った社会システムが原因なのに、それを個人レベルの問題(個人の罪悪感)にすり替えているのです。

 

 

 

⭐️鋸山で見つかったコーラの意味

翌17日、坂間選手は千葉県鋸山で遺体となって発見されました。現場の車内には「3分の1ほど飲んだコーラのペットボトルが5~6本」残されていました。

 

 

 

 

「蓋を開けた直後の一番美味しいところだけを口にしていた」このコーラは、長期間の絶食と水分制限により極度の飢餓感と渇きに苛まれていた坂間選手の最後の「人間らしい欲求」だったと父親は述懐しています。

 

 

坂間選手の父・一平さんは、息子の最期について沈痛な面持ちでこう証言しています。「千葉県にある鋸山の絶壁からの飛び降り自殺でした。登山口の駐車場にあった車には、3分の1ほど飲んだコーラのペットボトルが5~6本残されていた。蓋を開けた直後の一番美味しいところだけを口にしていたんです。減量中は飲めなかったコーラを最期に味わいたかったんだろうな、と……」

 

 

⭐️スポーツ界の構造的問題:金銭優先と選手軽視

坂間選手の悲劇は、現代ボクシング界だけでなく、スポーツ界の構造的問題を浮き彫りにしています。ワールドスポーツボクシングジムの会長は「事あるごとにカネを求めてきた」「選手の入場時に使用する応援のぼり30本の代金30万円分を折半してほしい」など、常に金銭面を優先していました。

 

 

 

人気選手である坂間選手は、ジムにとって「売上を期待できる商品」であり、健康管理よりも興行価値が重視されていたのです。

 

 

 

坂間叶夢選手は、右拳の負傷と左足腱損傷という2つの深刻な負傷を抱えながら、わずか3ヶ月という異常に短い試合間隔で初防衛戦を強要され、絶食による過酷な減量と痛み止め注射による危険な対症療法を余儀なくされました。

 

 

 

父親の必死の直訴も無視され、医学的管理も完全に欠如した状況で、最終的に「もっと自分に厳しくしていかないと」という罪悪感的思考に追い詰められて自ら命を絶ちました。

 

 

 

この悲劇は、現代ボクシング界の金銭優先主義と選手軽視の構造的問題が生み出した「予防可能な死」でした。これは、スポーツ界全体にいえることです・

 

 

 

⭐️私たちが闘うべきリング

この事例を俯瞰してみると、やはり人類社会を古代から貫いてきた歪(いびつ)な権力者の思想が問題の根本であることが分かります。

 

 

それは、自分たち以外の奴隷を「物質・金銭主義」というラットレースに閉じ込めて、生命の本質を見失わせるというプロットです。このラットレースの一つがボクシングのような格闘技やスポーツということです。

 

 

 

あしたのジョーが闘うべき場所は、ボクシングのリングではありません。

 

 

本当の闘うべき場所は、歪な人類社会を作った権力者たちとのリングなのです。

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