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『身近なキッチンの危険:ガスコンロが放つ見えない毒「ベンゼン」』

『身近なキッチンの危険:ガスコンロが放つ見えない毒「ベンゼン」』

 

⭐️最近換気が悪く煙が室内に充満している焼肉や炭火焼き店で食事をした後に、頭痛や気分不良をたびたび経験するようになりました。

 

 

 

この原因を調べると、調理のときに発生するベンゼンやトルエンなどの「多環芳香族炭化水素(PAH)」の一種を含む煙を吸い込んでいることが原因であることが分かりました。

 

 

ちなみに、ベンゼンは明確に発癌物質として指定されています。トルエンも、頭痛、めまいなどの神経障害を引き起こします。

 

 

 

参考文献

・The exposures and health effects of benzene, toluene and naphthalene for Chinese chefs in multiple cooking styles of kitchens. Environ Int. 2021 Nov:156:106721.

 

 

 

⭐️煙に含まれる発癌物質の発生源は?

このベンゼンなどの発癌物質は、主に2つの発生源があります。

 

 

 

まず一つは、ガス(プロパンガス)の不完全燃焼によるものです。家庭用のガス調理(蒸し料理、揚げ物、グリル料理)でも換気が悪いと室内に充満します。

 

 

 

これはガスストーブの不快な臭いの元にもなっているものです。

 

参考文献

・Gas and Propane Combustion from Stoves Emits Benzene and Increases Indoor Air Pollution. Environ Sci Technol. 2023 Jun 15;57(26):9653–9663.

 

 

 

⭐️プーファから発生するベンゼン

次にベンゼンは食品自体からも発生します。その食品とは、プーファです。プーファが高温調理で発生する煙(揮発性成分)にベンゼンが含まれるのです。

 

 

 

菜種油とピーナッツ油の比較で、菜種油からのベンゼン放出量がピーナッツ油の約12倍に達することが確認されている点です。これは、菜種油に含まれる不飽和脂肪酸含有量の高さ(酸化のしやすさ)と直接関連しています。

 

 

 

つまり、最も酸化しやすいEPAやDHAを含む青魚をグリルしたり、揚げ物をしたりした場合に発生する煙に最もベンゼンなどの毒性物質が含まれるということです。

 

 

 

ちなみに、オリーブオイルに含まれるオレイン酸も高温調理で、ベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)を含む煙を発生させます。

 

 

参考文献

・Household Use of Solid Fuels and High-temperature Frying.. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans, No. 95.

IARC Working Group on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans.

Lyon (FR): International Agency for Research on Cancer; 2010.

 

・Catalytic Conversion of Free Fatty Acids to Bio-Based Aromatics: A Model Investigation Using Oleic Acid and an H-ZSM-5/Al2O3 Catalyst. ACS Sustain Chem Eng. 2021 Jan 25;9(3):1128-1141.

 

 

 

⭐️家庭用のガスコンロでも!

毎日使うガスコンロでも、実は目に見えない有害物質「ベンゼン」を放出していることをご存知でしょうか?

 

 

 

 

ベンゼンとは、前述したように、ガソリンやタバコの煙、塗料剥離剤などにも含まれる強力な発がん性物質です。

 

 

 

以前から血液がんや白血病との関連が指摘されていましたが、家庭のガスコンロからも危険なレベルで放出されているという衝撃的な事実が、最新の研究で明らかになりました。

 

 

 

⭐️子どものがん発症リスクは、大人のほぼ2

米スタンフォード大学を中心とする研究チームは、米国の630万人を対象に詳しい調査を実施しました。87戸の住宅で実際にガスコンロから出るベンゼンの量を測定し、そのデータを元に、様々な調理シーンを想定してコンピューターでシミュレーションを行いました。

 

 

 

その結果、なんと子どものがん発症リスクは大人に比べて約1.85倍も高いことが判明したのです。

 

 

子どもがなぜリスクが高いのかというと、体が小さいために相対的に多くの空気を取り込み、より多くの有害物質を体内に吸収してしまうからです。まるで大人と同じ部屋にいても子どもだけが何倍もの量を吸い込んでいるかのようです。

 

 

 

⭐️特に注意が必要な場所は?

ベンゼンの濃度は住宅のタイプによっても異なります。最も高濃度になるのは、小さなアパートやプレハブ住宅で、その次が長屋タイプの連棟住宅、一戸建て住宅という順番でした。

 

 

 

家が狭いほど空気が入れ替わりにくく、キッチンだけでなくリビングや寝室でもリスクが高まります。つまり、日常的に長い時間を過ごす場所こそが危険ゾーンなのです。

 

 

 

⭐️ベンゼン暴露を防ぐために今すぐできること

では、ベンゼンによるリスクを減らすために私たちはどうすれば良いのでしょうか?研究者らは次のような対策を推奨しています。

 

 

・揚げ物、グリル、や焼肉の煙を吸わないように留意する

 

・プーファの量が少ない食材を選ぶ

 

・ガスコンロを電気コンロに切り替える

 

・換気扇の使用を徹底し、窓を定期的に開けて空気を入れ替える

 

 

 

 

簡単な工夫でも、毎日の暮らしに大きな違いをもたらします。特に子どもや高齢者など抵抗力の弱い人がいる家庭では、今すぐ取り組むべき対策です。

 

 

 

 

⭐️見えない空気汚染への対応

アメリカおよび日本では、人々は1日の約90%を屋内で過ごしており、在宅勤務が普及したことでこの割合はさらに増えています。

 

 

 

見えない空気汚染による長期的な健康リスクが懸念されており、ベンゼン対策の重要性がこれまで以上に求められています。

 

 

 

心身の調子を崩したり、慢性的な病に苛まれたりするのは、こうした複合的な環境毒物に暴露しているからです。私たちの心身の健康を守るためには、こうした見えないリスクをしっかりと認識し、日々の生活の中で少しずつでも対策を実践していくことが何より大切です。

 

 

参考文献

・Lebel, E. D., Finnegan, C. J., Ouyang, Z., & Jackson, R. B. (2023). Gas and propane combustion from stoves emits benzene associated with elevated cancer risk. Environmental Science & Technology. https://doi.org/10.1021/acs.est.3c02044

 

・SCIENCE Alert, “Children’s Cancer Risk From Gas Stoves Nearly Double That of Adults.” https://www.sciencealert.com/childrens-cancer-risk-from-gas-stoves-nearly-double-that-of-adults

 

・INDEPENDENT, “Warning issued for common appliance – found in two out of five homes – that increases cancer risk for children.” https://www.independent.co.uk/news/gas-stove-cancer-risk-children-b2352485.html

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