『女性が大豆を多く摂るとなぜ肝臓がんリスクが高まる?』
納豆、豆腐、味噌、豆乳……日本の食卓に欠かせない「大豆食品」。
「健康に良い」と信じて日々の食事に取り入れている方も多いでしょう。
ところが――
国立がん研究センターの大規模調査で、「大豆に含まれるイソフラボンを多く摂取する女性ほど、肝臓がんのリスクが大きく高まる」という結果が明らかになったのです。
■ 国立がん研究センターの調査結果とは?
国立がん研究センターの研究チームは、約2万人の日本人を対象に12年近く追跡調査を実施しました。その結果、女性においては大豆に含まれるイソフラボン(ゲニステインとダイゼイン)の摂取量が多いほど、肝細胞がんのリスクが明らかに高まるという衝撃的な事実が判明したのです。
具体的な数字で見ると、その危険性は明白です:
・イソフラボン摂取量が最も多い女性グループは、最も少ないグループと比較して肝細胞がんリスクが約3〜4倍も高くなる
さらに驚くべきことに、この傾向はC型肝炎やB型肝炎ウイルスに感染している人に限定した分析でも同様の結果を示しました。
一方、男性では同じ関連性は確認されなかったのです。
参考文献
・Isoflavone consumption and subsequent risk of hepatocellular carcinoma in a population-based prospective cohort of Japanese men and women. Int J Cancer. 2009 Apr 1;124(7):1644-9.
・Plasma isoflavones and risk of primary liver cancer in Japanese women and men with hepatitis virus infection: a nested case-control study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2015 Mar;24(3):532-7.
私たちの食卓に潜むイソフラボンとは何か?
イソフラボンは、大豆を原料とする食品に多く含まれる植物性エストロゲン(エストロゲンと構造が類似し、体内でエストロゲン作用を示す)です。豆腐、納豆、味噌、醤油、豆乳など、日本の食卓に馴染み深い食品に豊富に含まれています。近年は豆乳などの飲料からも手軽に摂取できるようになりました。
日常生活でどれくらい摂取しているのでしょうか? 研究によると、最もリスクが高まるグループは1日あたりゲニステイン20mg以上を摂取していました。これは、豆腐約80gまたは納豆2/3パック相当です。「それほど多くない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
見過ごされてきた危険性:イソフラボンとがんの複雑な関係
イソフラボンはエストロゲン作用を持つため、乳がんや子宮がんを促進(増殖・転移)させることが細胞実験、動物実験、臨床結果など多数報告されています。
このガン促進効果は、動物実験において、女性の閉経前でも閉経後のモデルでも同じでした(体内のエストロゲン濃度に関係ない)。
日常の大豆などのイソフラボン含有食品摂取程度の低濃度ではガンを促進させるが、サプリメントなどの高濃度のイソフラボン摂取はガンを逆に抑制すると喧伝されてきました。
しかし、イソフラボンが高濃度でも乳がん細胞の増殖効果を持つことが示されています。
参考文献
・Effect of soy isoflavones on the growth of human breast tumors: findings from preclinical studies. Food Sci Nutr. 2014 Jul 10;2(6):613–622.
・Individual and combined soy isoflavones exert differential effects on metastatic cancer progression. Clin Exp Metastasis. 2010 Oct;27(7):465-80.
・The soy isoflavone equol may increase cancer malignancy via up-regulation of eukaryotic protein synthesis initiation factor eIF4G. J Biol Chem. 2012 Dec 7;287(50):41640-50.
・Dietary Isoflavones and Breast Cancer Risk. Medicines (Basel). 2017 Apr 7;4(2):18.
・Soy isoflavone extracts stimulate the growth of nude mouse xenografts bearing estrogen-dependent human breast cancer cells (MCF-7). J Biomed Res. 2012 Jan;26(1):44-52.
・Risks and benefits of dietary isoflavones for cancer. Crit Rev Toxicol. 2011 Jul;41(6):463-506.
・Dietary genistin stimulates growth of estrogen-dependent breast cancer tumors similar to that observed with genistein . Carcinogenesis. 2001 Oct;22(10):1667-73.
・Soy diets containing varying amounts of genistein stimulate growth of estrogen-dependent (MCF-7) tumors in a dose-dependent manner. Cancer Res. 2001 Jul 1;61(13):5045-50.
イソフラボンの研究結果が玉石混交な訳
イソフラボンのサプリメントを販売したいという経済的理由をバックにした(研究資金を拠出してもらっている)研究は論外としても、細胞実験および動物実験から得られたイソフラボンの危険性と疫学調査(ヒトでの結果)とは乖離がある場合がよく認められます。
これは、ヒトの調査では、大豆などのイソフラボン含有食品摂取以外にも他の結果に影響する要因(生活習慣、社会経済的地位、環境など、「交絡因子」という)が複雑に絡み合っていることが一つの理由に挙げられます。
たとえば、大豆をよく食べるヒトの方がむしろ乳がんが減少するという統計が出た場合、それは大豆以外の生活習慣や環境が影響している可能性があるということです。細胞や動物実験では、このような他の要因を排除できます。
もう一つの理由として、個々人の体内のエストロゲン濃度の違いによるものも結果に与える影響に違いが出ます。現代人は、エストロゲン作用をもつ農薬、大気汚染やプラスチック汚染も深刻になっているため、エストロゲン過剰になっています。
ここにイソフラボンのようなエストロゲン作用を持つものを足すと、さらにエストロゲン過剰になって様々なガン、自己免疫疾患や精神疾患の原因となります。
しかし、すでにエストロゲン過剰が極まっている場合、逆にイソフラボンを入れることで、これ以上の「エストロゲンはもう御免!」という体内の反応を引き起こすことがあります。これを現代のサイエンスでは、「ダウンレギュレーション」と呼び、ホメオパシーの原理にもなっています。
この場合は、エストロゲンシグナルを遮断する反応を導きだすため、ガンや自己免疫疾患が改善するケースがあると考えています。
このメカニズムに関しては、5月28日東京での『あなたの心身を癒すエーテル共鳴』講座でスピリチュアル体験を例にとって詳しく説明していきます。
■ “摂りすぎ”は危ない。今こそ見直す「予防原則」
以上から、すでにエストロゲン過剰の現代人は、大豆などのイソフラボン含有食品を過剰に摂取しないようにすることが予防原則となります。
一方で、日常的にエストロゲン暴露に気をつけている人であれば、適量の大豆製品摂取は健康上の大きな問題にはならないでしょう。
伝統的な日本食において大豆製品は重要な位置を占めています。しかし、エストロゲン過剰の現代人にとっては、過剰摂取によるリスクを意識することが心身の健康を維持する秘訣となります。