SNSに現れた“演技か本気か”…覚醒剤後遺症のリアルとは?
「覚醒剤を使っていました」とSNSで自ら告白する人物が話題になっています。
その言動に、多くの人が驚きと違和感を抱いたのではないでしょうか?
私も知人から情報を聞いて該当動画を確認しました。
タバコを吸いながら落ち着きのない態度、支離滅裂な反芻発言、そして妙に“他人を責める”口調…。
一見すると急性ストレスによる「被害妄想」にも見えます。
本人が覚醒剤の告白をしていなかったら、家族との別れなどによる過剰な急性ストレスによるセロトニン過剰状態と判断したでしょう。
覚醒剤がもたらす深刻な精神症状
覚醒剤(アンフェタミンやメタンフェタミン)使用後に現れる精神症状の代表格が、
- 幻覚
- 全能感(俺は一番頭がよいなど)
- 被害妄想
- 関係妄想(他人が自分を見ている・話していると感じる)
- 被迫害妄想(攻撃される、狙われていると感じる)
などの**覚醒剤誘発性精神病(amphetamine-induced psychosis)**です。
これらの症状は統合失調症と非常に似ており、一部の研究では、
覚醒剤使用者の中には、これが慢性化し、統合失調症へと進行するケースもあると報告されています。
📚 参考文献
- Treatment for amphetamine psychosis. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jan;CD003026.
- Withdrawal symptoms in abstinent methamphetamine-dependent subjects. Addiction. 2010 Oct;105(10):1809–1818.
セロトニン過剰と“被害妄想”の関係
急性ストレス、覚醒剤離脱や統合失調症による共通した精神病症状の背景にあるのがセロトニン系の過剰活動です。
セロトニンは、過去記事でお伝えしたように「幸せホルモン」とは正反対のもので、
過剰になると幻覚や妄想、衝動性行動を引き起こす可能性があります。
とくに:
- 外向的な人 → 攻撃的、他者への暴力的衝動(他殺)
- 内向的な人 → 自己否定的、抑うつ傾向からの衝動(自殺)
といった行動パターンが確認されています。
📚 参考文献
- Alterations in the serotonin system in schizophrenia: a systematic review and meta-analysis. Neurosci Biobehav Rev. 2014;45:233–45.
“ストレス過剰”か“本物”かは、いずれ明らかになる
SNSで告白している人物の言動が本物の覚醒剤後遺症か、あるいはストレス過剰によるものかは、薬物検査が陽性にならない限り判断が難しい部分もあります(もちろん、両方が重なっているケースもある)。
ただし、攻撃性・支離滅裂な思考・異常な他責思考などが継続的に見られるようであれば、
長期間の覚醒剤使用歴の可能性が高いと考えられます。
症状の変化や発言の一貫性、衝動性などを見ていくことで、
“ストレス過剰”か“本物”かはいずれ明確になっていくでしょう。