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『高血糖でも昏睡しない!? 驚くべき生物の秘密』

 

『高血糖でも昏睡しない!? 驚くべき生物の秘密』

 

人間なら昏睡状態に陥るほどの高血糖。ところが、そんな極限の環境でも何の問題もなく生きている生物がいます。

 

 

その生物とは―― コウモリ です。

 

驚きの研究結果:血糖値600 mg/dLでも平然と生きるコウモリたち

コウモリといっても、その食性は多様で、昆虫を食べるものから果実や花蜜を主食とするものまでさまざまです。ある研究では、これら幅広い食性を持つ29種199匹の野生コウモリを対象に、生体内での経口ブドウ糖負荷試験が行われました。

 

 

結果は驚くべきものでした。果実や花蜜を主食とする一部のコウモリは、ブドウ糖摂取10分後に血糖値が600 mg/dLに達するというのです。しかも数十分後に急に血糖値が半分まで低下する(ヒトの世界で言われるところの「血糖値の乱高下」)種も存在しています。

 

この数値は、人間なら意識を失いかねないレベル。それでもコウモリたちは平然と活動を続けていたのです。

 

 

 

なぜ人間は高血糖で昏睡するのか?

人間がこのような高血糖状態に陥ると、脳神経細胞に深刻な影響を与えます。主な理由は次の通りです:

  1. 脳の脱水状態
    高血糖により血液の浸透圧が上昇し、脳内の水分が血液中に移動してしまいます。これにより、脳神経細胞は脱水状態になります。
  2. エネルギー不足
    糖が細胞内に取り込まれず、脳神経細胞がエネルギー源を失い機能不全に陥ります。この状態では、血液中に大量のケトン体がありますが、ケトン体は脳の機能全般をカバーできる燃料ではありません。

こうした仕組みにより、人間は高血糖が一定以上になると昏睡に至るのです。

 

コウモリが高血糖でも生きられる理由

一方、果実や花蜜を主食とするコウモリたちは、高血糖でも問題ありません。その秘密は、彼らの体の構造にありました。

  1. 腸の形態的適応
    コウモリは、十二指腸が長く、小腸の最初の部分に腸上皮細胞と微絨毛が多く存在しています。この構造により、糖質を効率よく吸収できるのです。

 

  1. 高い運動・代謝能力
    ホバリング飛行のために膨大なエネルギーを必要とするコウモリは、糖質を即座にエネルギーに変換し、血糖値を急激に低下させることなく持続的に利用できます。

 

また運動量が多い果実・花蜜主食のコウモリでは、血糖値の乱高下が起こることが分かりましたが、必要なときに必要量の糖が使用される自然現象なのでまったく問題がありません。

 

 

つまり、血糖値の変動は運動・代謝量に応じて決定されるだけです(血糖値の乱高下だけを見て騒ぐのは「要素還元主義」という典型的なサイエンスの迷妄です(^_−)−☆)。

 

 

腸の長さは環境で決まる?

この研究は、人間の腸の長さに関する迷信にも一石を投じています。「日本人の腸は長いから動物性食品の消化に向いていない」といった説がありますが、腸の長さは遺伝ではなく、食習慣や環境によって変化するのです。

 

 

さらに、腸の長さが長いのは食物繊維のためではなく、糖質を効率よく吸収するためであることが示唆されています。

 

 

結論:高血糖は一律に悪ではない

果実や花蜜を主食とするコウモリは、高血糖を維持することで飛行に必要なエネルギーを確保しています。

 

人間でも、活動量が多い人は高血糖になりやすい傾向がありますが、それは身体が即使えるエネルギーを必要としているからです。

 

血糖コントロールとは「一律に低ければ良い」というものではありません。その人の身体や活動に応じて、最適な状態が自然に決まるべきものなのです。

 

 

参考文献

  • Sugar assimilation underlying dietary evolution of Neotropical bats. Nat Ecol Evol. 2024 Aug 28;8(9):1735–1750.

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