昔は、いわゆる「冷え性」は、加齢現象のひとつとして見られていました。
ところが、現代では、若者も「冷え性」を抱えている人がたくさんいます。
手足が冷たく、とくに冷え込む季節ではいっそう寒冷刺激に耐え難くなります。
また、筋トレを日課にしている人で、夏でも手足が冷たいという話をよく耳にします。
特に糖質制限をして、いわゆるケトン食のようなタンパク質と脂肪を中心とした食事をしている人にその傾向が強くなっています。
さて、現代でなぜ「冷え性」が増加しているのでしょうか?
それはみなさんの食事に関係しているというと眉唾と思われるかも知れません。
糖質制限のケトン食(高脂肪、高タンパク、低炭水化物)では、低血糖になることから、アドレナリンというストレスホルモンが過剰に分泌されます(低血糖は生命体の最大の危機です!)(The contribution of norepinephrine and orexigenic neuropeptides to the anticonvulsant effect of the ketogenic diet. Epilepsia. 2008 Nov:49 Suppl 8:104-7.)。
ケトン食によるアドレナリン(norepinephrine)の上昇は、みなさんの脂肪を分解して、血糖値を高めます(Very Low-Calorie Ketogenic Diet: A Potential Application in the Treatment of Hypercortisolism Comorbidities. Nutrients. 2022 Jun; 14(12): 2388)。
アドレナリンは低血糖という危機に対して、救命救急の役割があるのですが、同時に私たちの手や足の末端の血管を縮こめる作用ももっています。
手足の末端に十分な血液が届きにくくなるため、冷え性が起こるのです。
また、糖質制限(ケトン食)によるアドレナリン(norepinephrine)上昇は、みなさんの脂肪を分解して、プーファ(酸化しやすい脂肪)を血液中に放出します。
このプーファは、私たちの甲状腺機能を低下させることを拙著『慢性病の原因はメタボリック・スイッチにあった!』等や過去記事でも繰り返しお伝えしてきました。
実際に、たった3週間の糖質制限(ケトン食)でも、甲状腺機能が低下します(Could the ketogenic diet induce a shift in thyroid function and support a metabolic advantage in healthy participants? A pilot randomized-controlled-crossover trial. PLoSOne. 2022; 17(6): e0269440)。
この甲状腺機能低下は、低体温による冷え性を引き起こします(Resolution of Hypothyroidism Restores Cold-Induced Thermogenesis in Humans. Thyroid. 2019 Apr;29(4):493-501)。
したがって、現代人の冷え性は、糖質制限(ケトン食)などの食事やそれによる甲状腺機能低下(あるいはエストロゲン過剰)が慢性化していることが原因です。
これから夏場にかかるので、まだ冷え性はそれほど顕在化しませんが、冬場になって手足が寒くなる人は、食事内容を再検討してみてはいかがでしょうか?
糖のエネルギー代謝(=甲状腺機能)が回っているかどうかの指標の一つとして、手足の温度を定期的に感じてみましょう(^_−)−☆。