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『「早食い」は糖尿病への誘い(いざない)〜リアルサイエンスシリーズ』

 

 

 

私が脳外科の研修医だった頃、教授を含めた上司が言っていたことに、「早飯」があります(そもそも食べない上司もいましたが・・・)。

 

 

 

ゆっくり食べる時間がないので(それだけ多忙ということ)、消化のよいものをさっと食べるということです。

 

 

この早食いは、実は私たちの心身に非常にダメージを与える食習慣です。

 

 

 

前回お伝えしたように、「早食い」という食習慣も2型糖尿病のリスクと関連していました。

 

実際にこれまでの報告でも、早食いは、ゆっくり食べる人と比較して、糖尿病や心臓血管疾患などのメタボリック・シンドロームの発症や血圧の上昇と関連していることが指摘されています(Association between eating speed and metabolic syndrome in a three-year population-based cohort study. J. Epidemiol. 2015;25:332–336)(Association between self-reported eating speed and metabolic syndrome in a Beijing adult population: A cross-sectional study. BMC Public Health. 2018;18)(Self-reported eating rate and metabolic syndrome in Japanese people: Cross-sectional study. BMJ Open. 2014;4:e005241)(Eating rate is associated with cardiometabolic risk factors in Korean adults. Nutr. Metab. Cardiovasc. Dis. 2013;23:635–641)(Association between eating speed and classical cardiovascular risk factors: A cross-sectional study. Nutrients. 2019;11:83)。

 

なぜ「早食い」は、糖尿病の発症と関係しているのでしょうか?

 

 

 

早食いする人は、ゆっくり食べる人と比較して、体内での炎症反応が高くなります(Self-reported speed of eating and 7-year risk of type 2 diabetes mellitus in middle-aged Japanese men. Metabolism. (2012) 61:1566–71)。

 

 

 

「早食い」というストレスが体内にダメージを与えていることが分かります。

 

 

 

この炎症反応は、私たちの脂肪を分解(「リポリシス」と呼びます)してしまいます(Interleukin-6 induces fat loss in cancer cachexia by promoting white adipose tissue lipolysis and browning. Lipids Health Dis. 2018 Jan 16;17(1):14)(Interleukin-6 stimulates lipolysis and fat oxidation in humans. J Clin Endocrinol Metab. 2003 Jul;88(7):3005-10)。

 

 

その結果、私たちの脂肪に蓄積しているプーファが血液中に溢(あふ)れかえることになります。

 

 

 

これによって、糖尿病だけでなく、あらゆる慢性病を引き起こすことになるのです(プーファは基礎代謝(糖のエネルギー代謝)の中心となる甲状腺機能を低下させる)。

 

 

もちろん、早食いは“食べ過ぎ”につながることで、消化管にストレスを与えることも関係しているでしょう。

 

 

 

食事は、ただカロリーを詰め込むことが目的なのではありません。

 

 

食べ物(植物や動物などの生命体の命をいただく)や自分の消化管に感謝しながら、家族でじっくり味わうことが、本当の意味の「食事」です。

 

 

 

「食事」は、心身の健康だけでなく、“生活の質”を決定する日常生活の中でも最も大切な儀式と言えるかも知れません(^_−)−☆。

 

 

その意味で、時間を作りだすための「早食い」は、逆に人生で最も貴重な時間をロスしているというパラドックスに陥っていることになりますね。

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