(2019年に記事にした内容の論文が正式にジャーナルに掲載されましたので、再度概要をお伝えします。)
植物は動物と同じようにコミュニケーション(情報伝達)をとっています。
現在のサイエンスで調べられている植物の情報伝達法は、植物が捕食者によるダメージや干ばつのときに放出されるテルペンや脂肪酸代謝産物などの「有機物質(volatile organic compounds (VOCs))」です。
この物質を感知した植物は、その情報を受け取って身を固めます。
さらに、これらの危険に晒された植物から、ある種の「振動(vibration)」が周囲に発せられていることも分かっています。
振動(vibration)は、空気という媒質がエネルギーによってかく乱された現象です。
このエネルギーによる空気の振動が、私たちが「音」と認識する実態です。
さて、植物はどのような音を出しているのでしょうか?
最新の研究で、植物は切断や干ばつといった危険な状況下で、20〜100 kHzの超音波領域の高い音を四方八方に放出していることが示されました(Sounds emitted by plants under stress are airborne and informative. Cell 186, 1328–1336, March 30, 2023)。
ちなみに私たちは、最大で16 kHzまでの音しか聞こえません。
したがって、植物の“悲鳴”は聞こえないということですね。
植物の超音波領域の音は、周囲の3~5m範囲まで届くようです。
干ばつのときと、切断された時の音は違うことも分かっています。
干ばつのときは、徐々に周囲に染みわたる様な音が放出されますが、切断のときは迅速に周囲に響くような音が放出されるようです。
実際に近隣の植物の“悲鳴”を聞くと、周囲の植物は干ばつに耐性をもつように適応することも分かっています。
植物に毎日声をかけると元気になるというのも、あながち思い込みではないかも知れません。
これは植物の悲鳴の音にすぎませんが、植物が太陽や十分な水分が与えられたときの“喜び”の音も放出されているはずです。
今後の実験で、植物の“喜び”や“悲しみ‘などの音が検出されれば、植物も動物同様に、立派に”感情を持っている“ことが明確になるはずです(^_−)−☆。