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『病名をつける弊害について:学習障害の利権〜俯瞰シリーズ』

 

Mariko Ydaさんからカナダでの興味深い事例をご紹介頂きました。

 

 

学習障害の一つに、視覚の問題で文字、楽譜や図形が認知できないという問題があるものです。

 

これは、「視覚ストレス障害(Visual Stress Syndrome, Scotopic Sensitivity Syndrome)」と呼ばれています。

 

この視覚ストレス障害は、以下の6つの視覚の問題があるとされています(Irlen syndrome: systematic review and level of evidence analysis. Arq Neuropsiquiatr. 2019 Mar;77(3):194-207)。

 

 

  • 羞明(しゅうめい):光が眩しくて見れないこと、あるいは光を見ることで頭痛などの不快症状が出ること
  • 明暗のコントラストが判別できない
  • 文字や図形を見ると、動いているように見える
  • 視野の周辺がぼやける
  • 視野の固定ができない(じっと見る<凝視する>ことができない)
  • 空間認識ができない(文字が浮かび上がったり、沈んだりして見える)

 

これらの症状は、当初この症候群で提唱された、「ある光の波長に対するストレスがある」という単純な仮説では説明がつきません。

 

 

例えば、羞明(しゅうめい)は、私も脳脊髄の外傷で経験したことがありますが、髄膜炎でも起こる症状です。

 

明暗のコントラスに適応できない、あるいは周辺視野がぼやけるのは、網膜の問題も大きいです。

 

 

空間認識や文字、図形が動いたりして認知するのは、網膜〜脳(視覚野、その他の感覚野)の広い範囲のどこかに問題が起きています。

 

 

これらの複雑な問題を一つの学習障害の光知覚問題パターンとして分類化するのは、少し乱暴過ぎるといえるでしょう。

 

問題は、この視覚の障害を報告した臨床心理士の名前にちなんで「アーレン症候群(Irlen syndrome, Meares-Irlen syndrom)」と呼ばれて利権化していることです。

 

アーレン団体(Irlen institute)というものがあり、この団体が独自に提案した診断方法が用いられています。

 

 

しかし、この診断方法はウイルスのPCR検査法と同じく、まったくエビデンスがありません(low sensitivity and low specificity)(The effect of coloured overlays and lenses on reading: a systematic review of the literature. Ophthalmic Physiol Opt 2016: 36(5): 519-44)。

 

 

また、アーレンが主張しているカラーレンズ、メガネの装着やオーバーレイを用いる治療法にも確固たるエビデンスがありません(Controversial treatment using coloured overlays in visual processing disorders. Indian J Ophthalmol. 2020 Oct; 68(10): 2327–2328)。

 

したがって、「アーレン症候群(Irlen syndrome, Meares-Irlen syndrom)」とされているものは、診断そのものが間違っているだけでなく、治療法も効果が確かめられていないということです(逸話<都合のよい体験談を集めた>レベル)。

 

私たちはストレスが過剰になると視力が低下します(基礎医学参照)。

 

 

視力は視機能には、多大なエネルギーコストがかかるため、ストレス対応にエネルギーが割かれると、視力が低下するのです。

 

先日の脳の仕組みについてのウエルネスラジオでお伝えしましたが、視知覚も含めた脳の機能での問題は、すべてエネルギー不足からくる脳神経細胞の過剰興奮に集約されます。

 

 

この過剰興奮から、自閉症、学習障害、うつ病、統合失調症、認知症などの様々な症状となって現れてくるのです。

 

 

したがって、仮にアーレン症候群と間違って診断されたとしても、ゆっくり文字を読む練習などを継続すると、文字が読めることができるようになります。

 

ただし、大前提として、脳の過剰興奮を抑えるためには、プーファフリーで良質の糖質を摂取する必要があることは言うまでもありません(^_−)−☆。

 

Mariko Ydaさんのご報告にもあったように、光を遮るサングラスをしてもしなくても実は変わらない場合もあることから、この診断名と治療法がいかにエビデンスに基づいたものではないということが分かります。

 

 

また、辛抱強くゆっくり学習していくと、「ある日突然紙の上の音符と音が一致したようで、急に読譜が早くなった」「教えるとすぐに読めるようになって、しかも一度教えたら2度と忘れない」ということが起こるのです。

 

また、私たち生命体は一つの機能が低下すると、違う機能で代償する営みがあります。

 

 

読めなくても、その分聴覚が発達すれば、それは一つの能力(個性)となります。

 

すべてはリアルサイエンスの理解がないことから派生した問題ですが、学習障害についても病名をつけることでその子供をダメにすること(個性を潰す)、そして利権化する良い例だと思います(^_−)−☆。

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