コビットプロットによって、私たち大人よりも悪影響があったのが子供たちだったと思います。
大人は会社に行かなくても、ズーム(ZOOM)やビデオ会議などで、自宅で仕事ができる(remote work)と喜んだ人もいるかも知れません。
米国では労働時間の20%はこのようなリモートワークにシフトしています。
学校でも、リアルの触れ合いがなくなり、ズーム(ZOOM)などでのバーチャル(virtual)授業が主体となっていました。
このようなバーチャルなコミュニケーション方法は、従来のリアル世界と同じ効果をもたらすのでしょうか?
最新の『ネイチャー』誌に掲載された研究論文に、そのバーチャル・コミュニケーションのもたらす効果について興味深い結果が報告されています(Virtual communication curbs creative idea generation. Nature. 2022 May;605(7908):108-112)(Virtual collaboration hinders a key component of creativity. Nature. 2022May;605(7908):38-39)。
バーチャル・コミュニケーションでは、リアルの世界で発揮できた創造性(creativity)が低下するという結果が出ています。
ビデオ会議などでは、画面を集中して見るために、認知能力がそこだけに限定されてしまいます。
思考をフォーカスする「マインドフル瞑想」でも、創造性が低下し、うつ傾向になるというエビデンスを拙著『慢性病はメタボリック・スイッチにあった』でご紹介いたしました。
「マインドフル瞑想」も思考だけにフォーカスするので、ある意味バーチャル世界と同じと言えます。
創造性を高めるためには、思考をある程度分散させなくてはなりません。分散というのは、いろんな情報を取り入れるために、少し脳の緊張を緩ませるということです。
また他人の表情や場の雰囲気を読み取るといったソーシャル・スキルは、思考ではない脳の機能が必要とされ、リアルでしか磨くことができません。
私も最近はこのことを自覚することがあります。
以前は、研究論文はすべてプリントアウトして、リアルの紙にしてじっくり読んでいました。
リアルの紙だと、線を引っ張ったり、重要なところにマーキングしたり、書き込みしたりできます。
リアルの紙に書き込みしたり、読むのを離れて窓の外を眺めたり、数日寝かせたりするうちに、新しいリンクができるのでしょう。
しかし、最近はあまりにも読むべき研究論文が増大したため、オンラインで読んでしまうことが多くなりました。
オンラインで読むと、不思議と頭に残らないのです。つまり、新しい視点に発展しないのです。
私は本をキンドルなどの画面で読んだことがないのですが、おそらく同じことが起こるでしょう。
現代の教育のように、ただ権力者に従うロボット養成であれば、むしろバーチャル・コミュニケーションの方が有効でしょう。
しかし、生命体の本当の真価とは、無限の創造性にあります。
私たちが生き生きとして人生を全うするためには、リアルに優るものはありません(^_−)−☆。