思考が煮詰まってくると、気晴らしにスポーツの記事を読む事があります。
先日、ある日本のプロ野球選手が打撃の調子が良くなっていたらしく、このオフの間に20kgの体重増加があったことが話題になっていました。
1日に9合の米や20杯以上の豚骨ラーメンをたべて体重を増やした選手もいるといいます。
その一方で、ある日本のプロ野球選手が監督の勧めで体を絞って9キロ体重減少したことが記事になっていました。
しかし、この記事ではプロのトレーナーの重要な意見が掲載されています。
それは、大切なのは「筋肉量(除脂肪体重)であって、体重そのものではない」ということです。
急激な体重増加は、脂肪の増加によるものです。
筋肉の合成は短期間ではこれほどアップしないからです。
炭水化物を極端に過剰に摂取するとエネルギーとして使用されない余剰分は、脂肪へと変換されて備蓄されます。
この場合の余剰の炭水化物から合成される脂肪は、飽和脂肪酸であってオメガ3のように容易に酸化されて悪影響を与えるものではありません。
しかし、余分な脂肪の重量のおかげで、それを支える体に負担がかかります。
特に全身の関節、靭帯組織に負担がかかってきます。
負担のかかる部位に炎症が発生し、関節、靭帯が硬化して可動範囲が狭くなってきます。
これで関節が動かないと筋肉も動かすことができなくなるため、筋肉も硬化します。
これが、アスリートたちが勘違いして体重を増やす筋トレ(アウターマッスル中心の筋トレ)を行うと、故障が起きて引退せざるを得なくなる理由です。
「筋肉隆々の体はゴルフに必要ない。ゴムまりのような強くて柔らかい筋肉を作ることが大切」はジャンボ尾崎氏(ずば抜けて頭がいい)の言葉です。
これは、すべてのスポーツだけでなく、私たちの日常生活でも参考になる筋肉の質の話です(この急激な体重増加のプロ野球選手は開幕から不振が続き、二軍行きとなっています)。
さて、一方の急減な体重減少も危険です。
この場合は、ストレスホルモンであるコルチゾールの作用によって、脂肪だけでなく、筋肉が分解されているからです。
「数ヶ月で何Kgの体重減少達成!」という広告をよくみかけますが、これは確実に筋肉を分解しています。
筋肉の分解は、ガンや糖尿病の末期の特徴ですが、老化のサインです(寿命が低下する、あらゆる病による死亡率が高くなる)(Musculoskeletal Changes Across the Lifespan: Nutrition and the Life-Course Approach to Prevention Front Med (Lausanne). 2021 Aug 31;8:697954)(Skeletal muscle mass in relation to 10 year cardiovascular disease incidence among middle aged and older adults: the ATTICA study. J Epidemiol Community Health. 2020 Jan; 74(1): 26–31)。
これは筋肉分解によって甲状腺機能(=糖のエネルギー代謝)が低下することと、プーファを処理する筋肉が少なくなりプーファがその分さらに蓄積するからです。
さらに筋肉分解に先立って発生している脂肪分解、つまりリポリシスであらゆる慢性病の引き金が引かれます(拙著『病の原因は「メタボリック・スイッチ」にあった』〜病はなぜ治らないのか〜に詳述しています(^_−)−☆)。
急激な体重減少や増加は、確実に糖のエネルギー代謝を低下させていきますので、プロをめざすお子さんだけでなく、みなさんも気をつけてください。