Book

『オメガ3は必須脂肪酸ではない(その2)〜オメガ3神話をやめると病は治る』

 

みなさんのペットが以下の症状を呈したら、ある病態を考えないといけません。

 

 

・発熱

・食欲不振

・抑うつ

・無気力

・皮膚の過敏性亢進

・不活発

・皮下の硬い塊(セルロイドの多発)

・むくみ

 

 

 

これらの病態は、100年以上も前から「イエローファット病(yellow fat disease)」と呼ばれていたものの特徴です。

 

文字通り、皮膚表面だけでなく、内臓にも黄色の脂肪組織に覆われる病態です。

 

 

研修医時代には消化器外科も経験しましたが、糖尿病や肥満の人だけでなく、ガンの人でも内臓がこの黄色の脂(omentum)でぎっしりと覆われていました。

 

 

脂で手術用のゴム手袋がすべって手先が効かないので、頻繁に脂をタオルで拭いた記憶があります。

 

 

1920年代には、魚の缶詰、フィッシュオイル(タラの肝油)などのオメガ3は、家畜やペットにこの「イエローファット病(yellow fat disease)」という脂肪組織を中心として全身に炎症が起こる病気になることが知られていました (Are the so‐called “A” vitamins in Cod Liver Oil the cause of its toxic effect on the organism; and can a basal diet, complete as regards the so‐called “B” and “C” vitamin contents, prevent this toxic effect? Acta Paediat 7, 1927,  https://doi.org/10.1111/j.1651-2227.1927.tb18077.x)( Changes in tbe organism caused by Cod Liver Oil added to the food. Abstr. of conim. XI1 intern. Physiol. Cougr. Stockholm 1926. Skand.Arch. 1926.)。

 

詳細にこの病態を調べると、成長障害、白血球減少(形態形成維持失敗)、心筋細胞の出血、心筋細胞の硬化・変性、肺組織の浮腫や肝臓の壊死などが確認されています(Changes in the Organism caused by Cod-liver Oil added to the Food. Acta Paediat. 6, 165-179 , 1926, https://doi.org/10.1111/j.1651-2227.1926.tb09343.x)。

 

元々、第二次世界大戦前までは、タラの肝油(EPA,DHS)は、現在のビタミンのサプリのように喧伝されて販売されていました。

 

 

フィッシュオイル産業は、タラの肝油はビタミンAの供給源(のちにビタミンDも含まれると言い出した)として販売し、膨大な利益を上げていたのです。

 

長期に保存した魚や冷蔵庫の温度管理に問題があった場合にこの病態が起こることから、魚に含まれるオメガ3の過酸化脂質がこの病態の原因であることが当時から報告されていました(Steatitis On Mink Farms In Alberta. Can J Comp Med Vet Sci. 1958 Jul;22(7):240-4)(Experimental “yellow fat” disease in pigs. Cornell Vet. 1951 Oct;41(4):332-8.)(Steatitis (yellow fat) in cats fed canned red tuna. J Am Vet Med Assoc. 1958 Dec 1;133(11 Part 1):563-8)(Experimental production of steatitis yellow fat disease) in kittens fed a commercial canned cat food and prevention of the condition by vitamin E. Cornell Vet. 1954 Jul;44(3):310-8)。

 

また冷水魚を給餌することでも、この病態が起こりやすいことも当時から知られていました。

 

それにも関わらず、家畜にフィッシュオイルやドライフィッシュを与え続けたのは何故でしょうか?

 

 

 

それは、腐った魚の悪臭(過酸化脂質)で食欲不振になることで餌代が浮いたからです。

 

 

そして、オメガ3は細胞浮腫を引き起こすことで、体重がそれほど減少しないことも家畜の売却に貢献しました(筋肉量は減少している)。

 

 

その後、「イエローファット病(yellow fat disease)」では、オメガ3の過酸化脂質と鉄が反応して形成されるリポファッシン(lipofuscin)というシミが組織に多発していることが分かりました(Fish oil-induced yellow fat disease in rats. I. Histological changes. Vet Pathol. 1978 Jan;15(1):114-24)(Fish oil-induced yellow fat disease in rats. II. Enzyme histochemistry of adipose tissue. Vet Pathol. 1978 Jan;15(1):125-32)(Fish oil-induced yellow fat disease in rats. III. Lipolysis in affected adipose tissue. Vet Pathol. 1978 Jul;15(4):544-8)(Accumulation of autofluorescent yellow lipofuscin in rat tissues estimated by sodium dodecylsulfate extraction. Mech Ageing Dev. 1994 May;74(1-2):135-48)。

 

リポファッシン(lipofuscin)が皮膚表面から見えるようになったものを老人斑(aging pigments)あるいは肝斑(liver spots)といいます。

 

リポファッシン(lipofuscin)は、プーファと鉄の反応で発生した過酸化脂質が組織と結合した成れの果ての変性組織です。

 

 

リポファッシン(lipofuscin)自身が、プーファと鉄を含んでいるため、酸素と反応して過酸化脂質を発生し続けます。

 

このリポファッシン(lipofuscin)を掃除しようとした白血球は、飲み込んだ後に消化処理ができずに、最終的に死滅していきます。

 

 

これは前日お伝えした動脈硬化の血管の壁で起こっている現象とまったく同じです。

 

 

ちなみに、タラの肝油の給餌によって、血栓傾向が高まります(Normalization by dietary cod-liver oil of reduced thrombogenesis in essential fatty acid deficient rats. Thromb Res. 1989 Jan 1;53(1):45-53)。

 

 

したがって、「イエローファット病(yellow fat disease)」は、全身の組織・臓器で動脈硬化と同じ病態を引き起こしているのです。

 

冒頭に挙げたペットのイエローファット病の症状は、ヒトの甲状腺機能低下症(糖のエネルギー代謝低下)の基本的な病態とぴったり一致しています(^_−)−☆。

 

 

関連記事

  1. 『若いときは体を自由に動かすことが大切!』

  2. ◆パレオ協会ニュースレター◆  『鉄剤投与と気分高揚、多幸感』

  3. 『乳酸発酵は安全か?』

  4. 『土壌菌のワクチン!?』

  5. 『どうせ「生まれつき」と開き直ることができるか?』

  6. 『新型コロナウイルスにエイズウイルスが組み込まれているのか?』

  7. 『2020年の海洋汚染の最大の原因は?』

  8. 『強制ワクチン接種に「ノー」:デンマーク』