先日、数年ぶりに医師向けのニュースサイト(m3.com)にログインしたところ、非常に興味深い記事が掲載されていました。
臨床ダイジェストの臨床ニュースの
「3年砂糖をなめるだけ―神経性やせ症女性の心停止の理由【研修最前線】」と題する症例報告です。
この3年、砂糖をなめるだけの食生活を送っていた40歳代前半の女性が、ショック状態で自治医科大学附属さいたま医療センターへ救急搬入されてきたもので、まもなく心停止で亡くなっています。
これまで、神経性やせ症(2年前と3年前に敗血症性ショックを起こし救急搬送、挿管となった経験あり)および右大腿骨骨折(数カ月前)の既往があります。
搬送時の所見では、記載の内容を見る限り、血圧低下以外には特に目立ったサインはありません(私が見るところです(^_−)−☆)。
血液検査では、低血糖、アンモニア、肝臓酵素と乳酸の上昇と甲状腺機能の低下が認められたようです。
心電図は正常だったようですが、心臓はポンプとして機能していないという所見が認められています(左室駆出率(EF)は20%程度)。
この女性の場合、特に文中にことわりがないので、黒砂糖でなく、白砂糖を3年間舐めていたと思われます。砂糖が命綱であることを直感的にわかっていたのでしょう。
しかし、白砂糖でもいずれ限界が訪れます。
この心臓機能停止は、何故起こったのでしょうか?
この連載記事では見事にその回答を書いていましたが、これは典型的な「脚気(beriberi)」です。
基礎医学のビタミン総集編でお伝えしたように、ビタミンB1不足による糖のエネルギー代謝ブロック(PDHのブロック)によって臓器が機能不全になる病態です。脳神経系と心臓に真っ先に症状が出現します。
脚気は日露戦争で多くの日本兵士の命を奪いました。
白砂糖は命の源泉ですが、精製しているためにビタミン、ミネラル類がまったくありません。
通常は、他の食品からビタミン、ミネラル類を摂取するために、糖質は白砂糖でもOKなのですが、白砂糖だけだといずれ脚気となります。
これは白米だけでも同じことが起きます(白米はデンプン質なので、白砂糖ほどはもたない)。
この記事では血算のデータが記載されていないので貧血があったかどうかを確認できませんが、ビタミンB12も動物性食品からしか摂取できないので、ビタミンB12欠乏性の貧血が起こっていたと思います。
砂糖は、グルコースとフルクトースに分解されて、アミノ酸、脂肪、コレステロール、遺伝子などの構成成分を作ることができます。これが3年も持ち堪えられた主因です。砂糖はまさに命の源です。
脂肪だけ、あるいはタンパク質だけでは、白砂糖のように3年間も持ち堪えられません。
ビタミンやミネラルを含むハチミツ、フルーツや精製度の低いショ糖であれば、さらに長く持ち堪えられるでしょう。
白砂糖だけで何年生きられるか?
このような人体実験が倫理的にできないため、今回は驚きの症例報告でした(^_−)−☆。