親族、配偶者、愛犬あるいは恋人を失う経験を「ブロークン・ハート(broken heart、正確にはbereavement)」といいますね。
日本語でも「胸が引き裂かれる」という言い回しがあります。
私たちはこのような経験をすると、本当に胸痛や息切れなどを自覚します。
これを現代医学では、「気の持ち様」と軽く考えて、抗うつ剤や睡眠薬を処方していました。
しかし、私たちが深い哀しみにあるときは、実際に文字通り、心臓の筋肉が不規則に収縮して、命に関わるような不整脈(心房細動、Afib)や心筋梗塞を引き起こします。
これを「タコツボ心筋症(Takotsubo cardiomyopathy (TTC))」と日本人が名付けています(Heart Fail Clin, 9 (2), 137-46, vii Apr 2013)。
収縮期の心臓の動きが局所的に悪くなり、その形態が「たこつぼ」に似ていることから「タコツボ心筋症 (TTC))」と名付けられています。
精神的ストレスによるエストロゲン上昇が根本にあり、エストロゲンがアドレナリンなどのカテコールアミン、さらにはコルチゾールを上昇させるために、心臓の不規則な収縮が起こることが分かっています。
自分にとってかけがえのない人物を失くすと、その最初の1週間で、通常の人の6倍の心筋梗塞の発症が高まることが分かっています。これは、タコツボ心筋症から発展した形と言えます。
最新の研究で、エストロゲン、コルチゾールやアドレナリンの作用を抑えることで、深い哀しみの後に起こる心筋梗塞を抑制することが確認されました(Am Heart J, 220, 264-272 Feb 2020)。
この研究では、低用量のアスピリンとβブロッカーというカテコラミンを抑制する薬を使用しています。
アスピリンは、エストロゲンおよびコルチゾールの両方を抑える作用を持っています(これが、アスピリンが感染症の根本治療薬と言われる所以です(^_−)−☆)。
アドレナリンなどのカテコラミンをブロックするためには、糖、塩も有効です。
「ブロークン・ハート」で失意にあるときも、しっかりと糖・塩を摂取して糖のエネルギー代謝を回しておくことが、命に関わる合併症(心筋梗塞)だけでなく、今回の新型コロナ感染症(COVID-19)などの感染症を防ぐためにも必要なのです(^_−)−☆。