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『次亜塩素酸に何故こだわるのか?:認知の落とし穴』

心身の健康ヘルスケア・パーソナルコーチのリアル・サイエンスドクタ—崎谷です。

次亜塩素酸水と次亜塩素酸塩(キッチンハイター)は違うものなので解説が欲しいというメッセージを受けております。

以前の記事では、次亜塩素酸水を販売している業者の方から丁寧なコメントを頂いていました(今日気付きました)。

こうやって謙虚で少しでも俯瞰できる日本人が存在していることだけでもホッとします。

まず次亜塩素酸についての記事の趣旨は以下になります。

リアルサイエンスでは、基本的に塩素化合物(ハロゲン化合物)は、生命体に著しいダメージを与えるということ及び、「バイキン悪玉説(germ theory)」がフェイクサイエンスであることを知って頂くために、次亜塩素酸を題材にしています。

まずここをしっかり押さえた上で、事実を整理していきましょう。

次亜塩素酸水と次亜塩素酸塩(キッチンハイター)の違いは、業者の方からのご指摘の様に塩素ガスを発生させるかどうかの違いがあります。

塩素ガスを発生しやすくて注意を要するのは次亜塩素酸塩(キッチンハイター)の方です(塩素ガスと水との反応で、次亜塩素酸が形成されるが、この逆反応も化学的には起こせる)。

ここだけが違う点です。

あとは主題である塩素の毒性については同じです(微生物を殺傷する塩素の毒性は同じ。毒性が少なければ、同じ生命体であるバクテリアを殺傷できない)。

それでは、なぜ次亜塩素酸水を使用することを推奨しないのか、前回の記事をもう少し敷衍していきましょう。

次亜塩素酸は、生体内で非常に反応性の高い化学物質で、プーファから産生されるアルデヒド、反応性の高い活性酸素種(ハイドロキシラジカル)や水銀などの重金属と同じ作用を及ぼします。

その例をあげていきましょう。

まず私たちの細胞の構造を破壊していきます。細胞及び血液内の重要な働きをするタンパク質を粉々に分解(fragmentation)してしまいます(Amino Acids. 2003 Dec;25(3-4):259-74)(Biochem J. 1998 Jun 15;332 ( Pt 3)(Pt 3):617-25)。

あるいはタンパク質(アルブミン、セルロプラスミン、細胞外マトリックス、コラーゲンなど)を不可逆的に架橋(クロスリンク)させて変性させます(Free Radic Res. 2018 Feb;52(2):232-247)(Biochemistry (Mosc). 2019 Jun;84(6):652-662)(Free Radic Biol Med. 2019 May 20;136:118-134)(Redox Biol. 2019 Jan;20:496-513.)(Redox Biol. 2018 Oct;19:388-400)(Free Radic Biol Med. 1993 Dec;15(6):637-43)。

次にタンパク質(アミノ酸)と結合して、変性させることで機能にダメージを与えます。

そのことで酵素などの働きがブロックされます。特に糖のエネルギー代謝の初段階である解糖系の酵素( glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)は最も影響を受けやすいとされています(IUBMB Life. Oct-Nov 2000;50(4-5):259-66)。

その他、多数の重要な酵素(creatine kinase, sarco/endoplasmic reticulum Ca2+-ATPase (SERCA), caspases, cathepsins B and L and protein tyrosine phosphatases (PTPs)etc)なども失活します。

3つ目は、炎症ゴミを産生することです。

変性したタンパク質(アルブミンなど)は、”炎症ゴミ(increasing the immunogenicity of proteins )”となって全身に炎症を引き起こします(PLoS One.2015 Apr 7;10(4):e0123293)(Free Radic Biol Med

. 2014 Mar;68:326-34)。

これらの次亜塩素酸の作用は濃度依存ですが、バクテリアだけでなく、私たちの細胞の構造と機能も破壊してしまうのです。

そして、アルデヒドと同じく、遺伝子にもダメージを与えます(Mutagenesis. 2010 Mar;25(2):149-54)。

現代人において、次亜塩素酸などの塩素化合物を使用することで私が最も危惧しているのは、前回もお伝えした様に現代人の体内に蓄積しているプーファ(多価不飽和脂肪酸)との反応です(Clin Lipidol. 2010 Dec 1; 5(6): 835–852)(Arch Biochem Biophys. 2018 Mar 1; 641: 31–38)。

最終的には次亜塩素酸もプーファと反応してアルデヒドを発生させるため、プーファでもたらされる病態(慢性病)が次亜塩素酸でも全て出揃うことになります。

これらの相互作用によって、必要(健康の場において食細胞が処理で使用する量)以上の次亜塩素酸の上乗せは、動脈硬化、 神経変性疾患,  リウマチ関節炎などの自己免疫疾患, 腎臓病,癌 などのあらゆる慢性病を引き起こすのです(Free Radic Biol Med. 2014 Jun;71:240-55)。

感性が優れているか、思考能力があるとその危険性が認知できますが、一般則として、人間はこの様な病態への変化は時間を要する(ボディブロー)ものは認知できにくいのです。

放射線も目に見えないので全くこれと同じです。急性の障害が出る様な放射線量であれば、一般の人でも「危ない!」と認知できるのですが、長期間に渡って悪影響を与える低線量や内部被曝では、専門家と呼ばれる人たちでさえ因果関係を見失ってしまうのです(次亜塩素酸も同じです)。

アルコールより次亜塩素酸水の方が手荒れをしなくていいのは何故か?というご質問も頂きました。

これも次亜塩素酸の濃度によることと、次亜塩素酸は、皮膚表面や粘膜にダメージを与えなくても、血液、細胞内に入り、上記のような不可逆な変化を引き起こすことを回答しました。

トランプの「殺菌・漂白剤を血液に入れたらどうか?」というユーモア?に、米国医師会のハリス会長は「どのような状況だろうと、漂白剤などの殺菌剤を摂取したり注入したりすべきでない」と警告したというニュースが話題になっています。
 
 
医師でさえも、血液中に消毒薬・漂白剤が入ると危険だということがわかっていながら、経皮吸収や吸引によっても容易に血液に移行することに思考が及んでいません・・・・
 
 

これもすぐに肌荒れすると、「危ない」と感じることができますが、皮膚を通過して血液中に入った後に反応を起こすという、ダメージが出るのに時間差がある場合には、一般の人ではなかなか認知しにくいのです。

 

問題は、次亜塩素酸による細胞へダメージは、不可逆的で発生を防ぐ手立てがほとんどありません。

従って、必要以上の次亜塩素酸を含めた塩素化合物を体内に入れないことが最も効果的な予防策となるのです。

さらに次亜塩素酸は、食品添加物にも入っているから安心なのではありません。食品中のタンパク質や微量栄養素を変性させるからです。実際に食品中のビタミンB12も次亜塩素酸で変性することが報告されています(ACS Omega 2020, 5, 11, 6207-6214)。

変性したタンパク質は、炎症ゴミとなってアレルギーや自己免疫疾患の原因になります(『新免疫革命』『オメガ3の真実』参)

水道水に塩素(次亜塩素酸)が入っているから、塩素が安心とは言えないのと同じです。

この塩素が生体内でもたらす悪影響のエビデンスの前に・・・・

何度も言いますが、そもそも「バイキン悪玉説(germ theory)」がフェイクサイエンスであることから、消毒や殺菌という概念そのものの前提が間違っているのです。

今回は次亜塩素酸を題材として取り上げましたが、フッ素化合物、アルコールや抗ウイルス剤でも全く同じことが言えるということが主題なのです。

もうちょっと視野を拡げて、何が本質なのかを見抜く“教養”がないと、人間に進歩はありません。

いくらネットで拡散されている情報をかき集めても教養にはなりません。

次亜塩素酸水と次亜塩素酸塩との違い(単なる情報に過ぎない)などは、些末な議論であることを俯瞰して戴ければ幸いです。

情報ばかりをかき集めて物事にすぐに反応せず、謙虚にじっくりと“教養”をつける様にしていきましょう。

そうすれば、世の中の言論の大半を占めるポジショントークなのか、リアルサイエンスなのかを見抜くことができる様になります。

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