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『海外渡航で体調を崩す原因』

 

たとえ短期間でも大気汚染レベルの高い都市に滞在するだけで健康を損なう可能性がある・・・・・・

そのような研究結果が報告されています(Circulation. 2019 Dec 10;140(24);1995-2004.)。

2014年または2015年の夏に中国の首都、北京に10週間滞在したロサンゼルス在住の健康な成人26人を対象としています。

北京への出発前、到着後(北京に滞在した年が2014年の群では到着から8週後、2015年の群では到着から6週後)、およびロサンゼルスへの帰国後の3度にわたり、対象者から血液および尿の検体を採取し、脂質酸化反応や炎症の程度、大気汚染物質の曝露量などを調査しています(対象者の平均年齢は23.8歳で、全員が非喫煙者)。

その結果は、すべての人において、北京滞在中、過酸化脂質の増加と、それによる心臓血管の炎症レベルの上昇が認められました。

対象者の尿中の大気汚染物質濃度は、ロサンゼルスにいたときと比べて北京滞在時には最大で800%上昇しています。

ちなみに、この研究観察中の北京の大気中の微小粒子状物質(PM2.5)の濃度は、ロサンゼルスと比べて平均で371%高かったようです。

このように短期間の滞在でも大気汚染の影響を受けることが明確になりました。

以前より、PM2.5などの大気汚染物質で心筋梗塞などのリスクが高まることをお伝えしてきました。

つまり、短期間の滞在で暴露した大気汚染によって、慢性病が引き起こされる可能性があるということです。

ここで一つ吉報があります。

今回の研究の対象者がロサンゼルスに戻ってから4~7週後には、悪化したバイオマーカーのほとんどが正常レベルに戻ったようです。

自然の豊かな土地への転地療法の効果は、汚染のより少ない大気を吸うことができるところにもありそうです。

中国(今回の武漢もそう)やインドだけではなく、パリやロンドンも大気汚染が深刻ですので、大気汚染のひどい都市への旅行時にはあまり無理をしないことですね。

 

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