2018年に脊髄損傷の治療を目的とした再生医療関連の製品(「スミテック」注)が日本で承認されました。
患者の脊髄液から採取した間葉系幹細胞(MSC)を培養して、静脈注射するものです。脊髄損傷の治療目的とした再生医療としては、世界で初めて臨床導入されたものです。
サイエンス後進国(かつ欧米の属国)の日本が初・・・・・・・
そんなことがあるのでしょうか(日本人の潜在能力が抑えられている現状で・・・・)?
日本では2014年の法改正により、再生医療等製品については、期限・条件付きの早期承認制度が世界に先駆けて導入されています。
この日本の早期認証制度が”甘々ではないか”という批判が起こっています。
その先鋒が日本の古くからの宗主国であるイギリス。
脊髄損傷の治療を目的とした再生医療の臨床試験について、「エビデンスや透明性に欠ける」とする『ネイチャー』誌の批判論文が掲載されました(Nature 2019;565:544-545、565:535-536)。
以下の3点に批判が絞れます。
1.臨床試験のデザイン自体がエビデンスレベルが低い
承認の根拠となった臨床試験の対象者はわずか13例にしかすぎません。対照群も設定されていないと書かれていました。
しかし、正常の人に危険のある幹細胞を注射する対照実験は倫理的にも難しいでしょう。
臨床試験はたとえ少数であっても効果が本当に認められれば、それでOKですので、ネイチャーのこの批判は無理があります。
ただ、今回の臨床試験で「脊髄損傷の改善が治療の効果なのか、自然に治癒したものか、医師の主観的判断によって回復と判断されたものか判然としない」と指摘しています。
この点は傾聴に値するでしょう。
2.臨床試験結果の透明性が低い
なんと・・・・・
承認の根拠となった臨床試験が論文化されていないのです。臨床試験の結果を公表しないのは驚くべきことです。
3.そもそも効果に対する疑問
これは私もネイチャー誌の批判に賛同します。静脈注射した幹細胞が脊髄の再生につながるという仮説自体に疑問符がつきます。
しかも、これは5年前の美容セミナーでもお伝えしましたが、幹細胞を静脈注射すると高率に肺の血管を詰まらせます(肺塞栓という致死性の状態になる)。
このネイチャ―誌の批判に対して、日本再生医療学会も抗議しているようですが・・・・
私もこの批評を知るまでは、日本がこのような不透明な臨床試験で製品を市場に出しているとは思いもよりませんでした。
この再生医療に希望を持っている人がたくさんいると思います。
しかし、”拙速さ”はその希望を大きな失望に変えてしまう可能性があります。
再生医療の本質は、研究の中心になっている”幹細胞”自体にあるのではありません。
幹細胞が育つ「場」にあるのです(^^♪。
これからの幹細胞の研究は、「場の理論」を深めていくことで発展していくと思います(^_-)-☆。