Book

『中性脂肪で気を付けることとは?』

 

「中性脂肪」と聞くと、あまり良い響きではないと思います。

肥満、動脈硬化・・・といったイメージでしょうか。

しかし、中性脂肪もその内容によって、まったく違うということをご存知だったでしょうか?

中性脂肪は「糖+脂肪酸X3」という形態をしています。

この脂肪酸が飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸かによって、中性脂肪のもつ意味合いがガラッと変わってきます。

よくフルクトース(果糖)の批判の矢面に立つのが、中性脂肪を高める作用です。

実は、果糖を1日かなりの量を摂取しないと中性脂肪には変換されません(一般の食事では不可能)。

しかし、果糖には中性脂肪合成を促進する作用はあります。

果糖のみが中性脂肪に変換された場合は、中性脂肪の脂肪酸は3つとも完全な飽和脂肪酸(体内で酸化しない)になります。

問題は、プーファ(オメガ3&6)を摂取したときです。

このときには中性脂肪の脂肪酸はプーファになります。

この場合の中性脂肪は過酸化脂質反応を受けるため、炎症ゴミとなって各組織で炎症を引き起こす原因になるのです。

その代表が動脈硬化です(Clin Chem Lab Med. 2015 Oct;53(11):1859-69)。

さて、最新の研究で、低血糖などのストレスによって脂肪組織がリポリシス(脂肪分解)されるときに、同時に中性脂肪もエクソソームという細胞外小胞(『オメガ3の真実』に詳述)に包まれて血液中に放出されることがマウスの実験で確かめられました(Science, 2019; 363 (6430): 989-993)。

通常はリポリシス(脂肪が溶かされる)では、脂肪細胞に蓄積されている中性脂肪が分解されて脂肪酸が血液中に放出されます(遊離脂肪酸)。

ところが、そのときに同時に分解されていない中性脂肪も放出されているのです。

研究論文では、この細胞外小胞に包まれた中性脂肪は、脂肪組織のマクロファージ(白血球)によって貪食さて、中性脂肪が分解され、かつリサイクルされるとしています・・・・・・

これは結果の解釈の大きな間違いです。

マクロファージはお掃除役ですから、ゴミ処理として中性脂肪を含んだ細胞外小胞を貪食するのです(『新・免疫革命』『基礎医学病理学・免疫学総集編』DVD参)。

そして、その中性脂肪にプーファが脂肪酸としてあると、過酸化脂質反応を起こして、うまくマクロファージ内でゴミ処理ができなくなります(アルデヒドがゴミ処理をブロックする)。

そうすると、今度は炎症ゴミを抱えたマクロファージ自体がゴミ(炎症ゴミ)となります。そのゴミとなったマクロファージを処理しようとした新しいマクロファージは、同じようにゴミ処理がうまくいかないために、それ自身がゴミになっていく・・・・・

という悪循環を繰り返すうちに、組織に線維化(動脈硬化や肝硬変)やガン化が起こってくるのです。

このように一口に中性脂肪といっても、脂肪酸が飽和脂肪酸(酸化しない)なのか、プーファ(炎症ゴミを作る)なのかでまったく体に与える影響が変わってくるのです(^^♪。

今回の研究(マウスとヒトでは違う可能性は残る)からは、血液中の中性脂肪が高いと出た場合は、ストレスがかかって脂肪組織から中性脂肪を入れた細胞外小胞が血液中に放出されていることも関係している可能性があるということは勉強になりました(^_-)-☆。

今日は少し難しい記事になりましたが、何度か読み返して頂くと、中性脂肪の捉え方が変わってくると思います(^_-)-☆。

関連記事

  1. 『ガン細胞はなぜ転移しやすいのか?〜リアルサイエンスシリーズ』

  2. 『なぜ日本の鶏肉は食べられないのか?〜俯瞰シリーズ』

  3. 『低脂肪牛乳で痩せるのか?』

  4. 『グリセミック指数の真実』

  5. 『ヨーロッパでの新型コロナ第二波について』

  6. 『”息こらえ”が得意な人の特徴は?〜リアルサイエンスシリーズ』

  7. 『生まれてくる子供の脳は何に影響されるのか?』

  8. 『同じ轍(てつ、わだち)を踏む〜俯瞰シリーズ』